無糖バニラ
「やだ、手繋いじゃって。仲いいわね~」


言われると思ったけど!


翼ママが思っているのはきっと、子供時代の延長線上のようなもの。


「本当に、翼は昔からこのはちゃんのことが大好きなんだから」


からかうように軽く言う翼ママに、翼がくるっと振り向いた。


「そうだよ」


あたしと翼ママは、多分同じ表情をしているだろう。

真っ赤な顔で、目を見開いて。

この場所で、平常心を保っているのは、翼だけだ。


翼は、またあたしの手を強く引いて、お店を出た。

足元が……おぼつかない。


「こ、こら、翼ー!帰ってきたら話聞かせなさいよー!」


扉が閉まる直前、背中から叫び声が聞こえた。
< 397 / 461 >

この作品をシェア

pagetop