プリズム!
その卑劣な行為に、夏樹は目を光らせる。

無意識に身体が動いていた。

夏樹は、その男の手を思い切り掴み上げた。


「この、痴漢野郎めッ!!」

「うわっ!!」


車内は騒然とした。

当然のように周囲からは注目を浴び、慌てた男は腕を振り払って逃げようとするが、

(…逃がすかッ!)

咄嗟に夏樹は、その腕を(ひね)り上げる。

「痛…たたたッ!」

その手を離すことなく次の駅まで耐えると、その男を連行するように無理矢理引き摺り降ろし、駅員へと差し出したのだった。


駅員へと引き渡すと男は素直に犯行を認めたので、そのまま連行されて行った。

それを駅のホームで見送って。

一つ小さく溜息をついたその時だった。


「あ…あの…」

不意に後ろから声を掛けられ、慌てて振り返ると。

そこには、先程被害に遭っていた同じ学校の女生徒が立っていた。

「…あ…」


(ヤバイ…。つい、卑劣な真似が許せなくてカッとなってしまったけど…)

車内で騒ぎ立てられ、注目を浴びてしまった彼女は、もしかしたら嫌な気持ちになったかも知れない。

瞬時にそう考えた夏樹は、すぐさま頭を下げた。
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