夏を殺したクラムボン



家の扉を開けるが、そこはいつもと変わらず人の気配はない。周は扉を閉め、白いスニーカーを脱ぎ捨てて家の中に上がった。



陽射しが強い外と比べ家の中は格段に涼しく、額に浮かんでいた汗も徐々に引いていく。



周はリュックを背負ったままリビングのそばの階段から二階に上がり、自分の部屋に直行した。



鍵をかけ、リュックを机の隣に置き、セーラー服を着たままフローリングの床に寝転ぶ。フローリングの上に、黒く長い髪が広がった。



冷たさが直に肌に伝わる。周は目をつぶった。



……この街で、小動物ばかり殺しているのは、いったい誰なのだろう。そして、浜田を殺したのは?





『人殺し』





不意に鳥肌が立った。昨日の莉央の冷ややかな嘲笑、自分を貫いていた幾十もの視線が脳裏に蘇る。



……私は殺していない。
私は犯人なんかじゃない。



深い息を1つこぼし、熱を持って高ぶりかけた鼓動を押さえた。



……小動物を殺している犯人はきっと2年4組にいる誰かだ。



そう考える理由ならある。校内で噂が流れ始めるのは、いつも決まってあの教室からだ。それはなぜなのか。



小動物を殺す、という行動は、犯人にとってどのような意味を持っているのだろう。



犯人が、あたかも自分が誰かに聞いたかのように噂を広めているとすれば。



――周は薄く瞼をあげ、無意識に右手で腹をなぞった。白い天井に見下ろされる。



……犯人は、自己顕示欲の強い人間なのか?



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