夏を殺したクラムボン



そのまま、桜が散る季節になった。



家に閉じこもったまま2年に進級した周に、担任から4組になったという知らせが来た。



家まで届けられた封筒の中には、新たな名札やクラスメイトの名前が載せられた紙などが入っており、何気なくそれに目を通した周は同じクラスに『成海 諒』がいることに気づいた。



しかし学校に行こうという気持ちは起こらない。日々激化していく夫婦の喧嘩にも嫌気がさし、彼女の心には鬱屈した感情が溜まっていた。






死にたい。



そう思うたび、彼女の頭に浮かぶのは
成海 諒の顔だった。



それはなぜなのか、彼女にはわからない。






6月29日の昼下がり、空は曇っていた。



外に出た周は足元までの草が生えた空き地で1匹の猫を見つけた。美しい、三毛の猫だった。人懐っこい雌の三毛猫で、周が近づくと鳴きながら彼女の手に身体をすり寄せた。



彼女はしばらくの間、その猫を撫でていた。動物に懐かれるのは初めての経験で、彼女は時間が経つのも忘れ、三毛猫の毛並みにしなやかな指を通し続けていた。



やがて、夕刻。



足音が聞こえた瞬間、猫は飛び上がり一目散に逃げていく。周は驚き、黒く汚れた手を宙に残し、三毛猫の後ろ姿を見送った。



足音の人物は近づき、背後から声がかけられる。しゃがんだまま振り向くと、目の前に立っていたのは、体操服姿の成海 諒だった。






『……確か、葉月 周だっけ』











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