あの夏に僕がここへ来た理由



また、僕は、夢を見た。

遠くで、母さんや妹達が僕を呼んでいる。
僕は、その場にうずくまり、頭を抱えて泣いていた。



海人は午前の仕事を終え、民宿の玄関先でひまわりを待っていた。
昨夜はひまわりに電話をしなかったため、今日は来ないのではないかと気になっていたが、ひまわりはいつものバスに乗っていつもの時間に来てくれた。

海人に気付いて嬉しそうに手を振るひまわりを見て、海人は胸が詰まり泣きそうになった。


「海人さんが元気になってくれて、本当に良かった・・・」


ひまわりは必要以上に海人を問い詰めることはしなかった。

そして、お弁当の中身にも、海人の体調を気遣うひまわりの優しさが見てとれた。

海人は、いつかはひまわりにも話しておかなければならないと思っている。


僕の中で起きている変化と、その先にあるものを。


サチの言うように、このままここに留まれるのならその時は笑い話になるだろう。








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