小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
トゥルルルル―…
トゥルルルル―……



再びハルトのケータイが叫ぶ。


「…また…電話…?」

「…ったく…誰だよ…。」

「いいよ?出て?」

「ごめんな。すぐ終わらすから。」


ハルトはベッドから滑るようにおりるとケータイが置いてあるテーブルへと歩いていく。

その間もケータイは鳴り続けている。

催促するように。

私たちを夢から引きずり下ろそうとするかのように…。



「…あ…。」


ケータイを手に取ったハルトの表情が曇る。


「……?」


私は黙ってその様子を見守っていたけど、自分もそっとベッドから出て服を身に付けた。


まだケータイは鳴り続けている。


「出ない…の?」


嫌な予感を感じながらも服を着終わりハルトに聞く。


「……ナナコから。」


「えっ…!?」


思いがけない名前に鼓動が波打つ。


―――ドクン…!


……大丈夫。

きっと、大丈夫……。




< 306 / 416 >

この作品をシェア

pagetop