小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
ハルトはDVDを止めることも忘れて財布をデニムのポケットにねじ込むとアパートを飛び出した。


もちろん今すぐ地元に戻るつもりだった。


愛車に乗るとよく知る道を辿った。

地元に着いたときにはもう夕方だった。



シュンの家の前に着いた。



そこからの記憶はとぎれとぎれになっている。



お通夜、告別式‥‥断片的にシュンの顔が浮かんでくる。


お棺の中のシュンは別人みたいに見えた。


…シュンじゃないみたいだった。


ナナコは泣きじゃくっていた。


ハルトはナナコに声をかけた。


「ナナちゃん‥‥」


言葉が続かなかった。
なんと言えるだろう‥‥恋人を失って泣く彼女にかける言葉なんて───。


ナナコは前も見ずに言った。


涙であふれる瞳には何も映っていなかった。



「私のせいでシュンは死んだんだよ!私のこと、送ったりしなければ‥‥!!」






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