あなたとわたしと、そしてあなたと。
のどかな町から少し都会に車で半時間。


途中まで先生が車を運転してくれる。


その先からは電車の方が都合が良いので電車移動になる。


ここにくるまでも先生は「その服、似合ってるね。可愛い真里愛さんにぴったりですよ。」
と言ったり、コンビニで買ってくれたココアの缶を「手を切ると危ないから…」とわざわざ開けてくれたり…


約17年ほど一緒に生活しているのにいっこうに私は慣れない…


電車に乗っていると…


先生が「え…」と小さな声をあげる。


ふと先生の後ろを見ると…ち、痴漢だろうか。


中年のおじさんの手が先生の背中からお尻を撫でる。


「や、やめてください…」



先生は顔をこわばらせて言う。


私は先生と電車に乗るのが久しぶりだったので突然の自体に私も混乱する。


でも、大切な先生を傷つけるなんてほんっとうに許せない。


バスケ部で鍛えた体から渾身の力を腕に込めておじさんの腕を握る。


「やめてください!警察呼びますよ。」


「これは立派な犯罪ですよ?それとも、捕まって人生めちゃくちゃにしますか?一生、男を痴漢した男として、生きていきますか?」


私もこんな経験は初めてだが、何より先生を守りたい一心で勇気を振り絞ったので煽るような形になってしまった…


「な、なんだいうるさいよ。わしは何もしてないぞ。周りの迷惑も考えてほしいね!」


まわりが騒然とし始めたので焦ったのかおじさんはしらばっくれ始めた。


私はそれにとてもイラッとしたのでまた口を開きかけると…


すっと先生が手を出した。


「もう大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」と私に笑いかけると


「もう、こんなことはしてはいけませんよ。」

と先生の口調でおじさんにいう。


嫌なことをしてきた相手にも嫋やかな笑みを絶やさない先生におじさんは一瞬で恋に落ちたかのように惚けた顔をする。


先生の寛大な心はすごいなあ…


でも、おじさんが先生に恋をしたところは流石にきつい…と思ったところで降りる駅に到着。


私達は電車から降りると街を歩く。
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