その背中、抱きしめて 【下】
「は、恥ずかしいし緊張するんだもん」
「何で」
いつにも増して『何で』攻撃がすごい…。
もう勘弁してくださいー…!
「高遠くんは緊張しない?」
「しないよ。なんなら今からでも先輩のこと名前で呼ぼうか?」
「いや、いいです。ごめんなさい」
高遠くんは私のこと『柚香先輩』って呼ぶから、そこから『先輩』を取ればいいんだもんね…私よりハードル低いよ。
でも、名前で呼ぶのも緊張するなら名前で呼ばれるのも緊張するから、私はまだまだ『先輩』のままでいい。
「ぷっ。ごめんなさいって何」
高遠くんが小さく吹き出した。
そして
「名前で呼ばれるまで返事しないでおこうかな」
意地悪なことを言う。
「そんなぁ…」
「じゃ、名前呼び捨てで呼んで」
無理だよムリムリ!!