その背中、抱きしめて 【下】
「言ったよね?私の1番好きな料理は高遠くんのカレーって」
美味しいと評判のレストランに行くより高遠くんが作ったカレーの方が私にとっては断然ごちそうだし。
「お詫びって言うなら、私にカレー作って。わかった?」
高遠くんの右ほっぺを軽くつねる。
「…わかったよ」
高遠くんが苦笑する。
今から私変わるんだ。
もっと高遠くんに対して積極的になるんだ。
もうあんな辛い思いするのはごめんだから。
高遠くんを誰かに取られたくないから。
「何でだろ。先輩に優位に立たれてるのもいいかも」
高遠くんがいきなり変なことを言い出すから、急に顔が熱くなった。
「ちょっと、何言い出すの…」
「俺S寄りだと思ってだけど、実はMっ気あんのかな」
真顔でそういうこと言わないで!
「…高遠くん、そんなこと言うキャラじゃなかったよね」
「そう?」
「そうだよ。もっとクールでさ。入学したての頃なんて相槌打つくらいしかしなかったよ」
喋っても必要最低限。
綺麗な顔なのにニコリともしないで、近寄りがたい雰囲気すら纏ってた。
「だったら柚香先輩のせいだな」
「せい?」
「違うか。柚香先輩の″おかげ″だ」