冷徹社長が溺愛キス!?

「大株主だから、邪険にも扱えないしね。正直、頭の痛い存在なんだよ」


課長はそう言うと、肩をすぼめて女性株主を嫌悪感たっぷりに見た。
毎年のこととはいえ、議長も対応に苦慮しているようだ。

すると、傍観者のごとく様子を見ていた社長が、おもむろに立ち上がった。
テーブルに置いてあったマイクを手に取る。


「議長からも申し上げておりますように、そのようなご提案は議事進行を妨げるものでございます。大変申し訳ございませんが、発言をお控えいただくか退席をお願いしたく存じます」


社長は女性株主に向かって頭を下げた。
毅然とした対応だった。


「……私が毎年、恥を忍んでこうしているというのに……」


突如、さっきまでの強気な様子から一転、彼女が肩を震わせ始める。


「議長、そろそろ採決に入ろう」


マイクを通さずに社長が言うのが聞こえた。
そのときだった。
女性株主が、何かを手にしてステージ上へ駆け上がる。
その手元でキラリと光る何かが見えた。

――まさか。
嫌な予感が背筋を駆け抜けた。

ほかのことは何も考えられなかった。
咄嗟に私もステージに走り出る。
そして、社長の前に立ちふさがるように彼女に対峙した。

そのとき見えた彼女は、顔面蒼白。
目からは冷静さが欠如していた。

彼女が私に向かって突進する。

そして、私の体に何かがかすめたと同時に、私は意識を手放した。

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