冷徹社長が溺愛キス!?

彼がうしろを気づかうような様子を見せたかと思ったら、三木専務があとから降りた。

ふたり揃って店の軒先へ走り、店内へと吸い込まれていく。
傘をずらして目線を上げると、そこはジュエリーショップだった。
それも、私には手の届かない高級品ばかりを扱う店だ。

恋人同士のふたりがこういった店に用事があるとしたら、私にはひとつしか思い浮かばない。
エンゲージリングだ。
きっと、ふたりで選びに来たのだろう。

決定的な場面を目の当たりにしてしまった。
私では相手にもならないと分かっていたくせに、胸が苦しい。
意識して呼吸しないと、酸素を取り込めなくなるほどだった。

ガラス張りの壁からは煌びやかな光が漏れ、その先には肩を寄せ合ってショーケースを覗き込むふたりの背中が見えた。



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