冷徹社長が溺愛キス!?

今まで生きてきて、これほどの衝撃的な事実を私は知らない。


「……それじゃ、社長とは?」

「社長と?」


三木専務が首を傾げる。


「彼とは大学時代からの友人だけど」

「付き合っていなかったんですか……?」

「やだ、私と彼が? まさか! お互い好みじゃないわ」


専務は笑い飛ばした。
社内に出回っていたのは、単なる噂に過ぎなかったのだ。
あまりにもお似合いすぎるゆえに、噂がひとり歩きしていたのか。

でも、まさか三木専務と加藤くんが結婚していたなんて……。

休憩室で加藤くんが食べていたお弁当は、三木専務が作ったものだったのだ。
“彼女はいない”という加藤くんの言葉に、嘘はなかった。
彼女じゃない。
奥さんなのだから。

あまりのショックに膝が震え出す。


「雨宮さん、大丈夫?」


心配そうに駆け寄った専務は、私を支えるように腕を掴んでくれた。


「……はい、大丈夫……です」


そうは答えたものの、実際のところは全然ダメだった。

専務は、社長の恋人じゃなかったのだ。

専務と加藤くんは、「絶対に秘密」だと何度も念押しし、私を会議室に残して出て行ったのだった。

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