冷徹社長が溺愛キス!?
◇◇◇
何百枚もの暑中見舞いのハガキの準備に疲れ、ひと息いれようと休憩室の自販機コーナーへと私は来ていた。
昼時の過ぎたそこは、さすがに誰の姿もない。
ホットココアのボタンをタッチしたところで、突然うしろから声を掛けられた。
「夏でもホットなのか」
まさかの社長だった。
まったく気配がなかっただけに、「ひゃっ」と変な悲鳴を小さく上げてしまった。
「……一年中、私はこれなんです」
「へぇ」
妙に感心したように頷き、社長は私がカップを取り出すと、一段上のアイスココアのボタンをタッチした。
少し離れたテーブル席に座ると、なぜか社長までカップを持って私の前に腰を下ろした。
特に話すこともなく、黙ったままココアをすする私たち。
しりとりのことを思い出して、いたたまれない気持ちになった。
早く立ち去ってくれないかと、つい社長に念を送ってしまう。
いっそのこと、お見合いすることを話して、あの“好き”はなかったことにしてしまおう。
ほかに話題を見つけられなくて、意を決した。