冷徹社長が溺愛キス!?

「だから、俺は別に優しくないですから」


続けざまに久万さん夫婦が言うものだから、社長は居心地が悪そうにお尻をモゾモゾを動かし、「いいか、勘違いするなよ」と私に向かって釘を刺した。
私はといえば、久万さん夫婦と社長に、それぞれ別々に「はい」と小さく頷くしかなかった。

そういえば、三木専務も同じようなことを言っていたことを思い出した。
『根は優しいの』と。

思い返してみれば、見捨てることだってできた私を山で助けてくれたのは社長だ。
私の重いリュックまで背負ってくれたのも。
逃げ込んだ山小屋で、寝込んだ私にジャケットをかけてくれたのも。

『花なんかくだらない』と言っていたのに、普通なら気づかないような小さな花でも、踏まないように歩く姿だって、優しさが現れた一面なんじゃないか。

そんなことを思いながら社長の横顔を眺めると、なんだか心が温かくなるのだった。


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