アメトムチ。
(今すぐこの場を離れよう)
(そうね)
と、私たちは視線で会話を済ませた。

「じゃあ、私たちが他の席にい・・」
「よっ」
「あ」

より子が「移動します」と言ってる途中で幸村部長がやってきてしまい、男性二人の真ん中の、上座的な空席に座ってしまった。

「どうした?田辺」
「・・いえ、何も」

幸村部長は、より子の直属の上司だ。
いつもお世話になっているし、幸村部長はより子や他の社員に対して、みんな平等に優しく接してくれる。
それに、幸村部長に罪はないんだし・・・突き詰めれば、他の男性二人も、だけど。
とにかく、ここで事をややこしくするわけにはいかない。

結局、移動するタイミングを失ったより子と私は、立ち上がりかけていた体勢からまた座るしか、術はなかった。

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