アメトムチ。
「だから俺は、ちーちゃんがバージンでも全然構わないよ」
「そ、そんな・・」
「遠慮するなって。俺が一から教えてやるよ。全部な」
「いーえっ!結構ですっ!」

私は必死に断ってるのに。
ニンマリ笑ってる野々瀬局長は、余裕いっぱいに見えて・・・やっぱりこの人、悪魔としか思えないんですけど・・・。

そんな人・・めいた悪魔が私の初めての彼氏とか・・・いやだぁ!!!
一体これのどこにロマンチックな要素があるのよ!?

そのとき、「野々瀬局長ー」と彼を呼ぶ男の人の声が聞こえた。
呼ばれた局長は、腕時計をチラッと見ると、すぐ私に視線を戻した。

「ごめん。もう行かないと。今から俺の歓迎会なんだ」
「あぁ、そうですか。そうですよね」

よし!これに乗じて、この件はウヤムヤに消し去ってしまおう!

「それじゃあ」
「また明日なっ」
「いえいえ!もう・・」
「ちーちゃんのファーストキスもバージンも、俺がもらってやるから。安心して」
「いいっ・・・?!」

それって、「もらう」じゃなくて、「奪う」の間違いじゃないの!?
ていうかこの人、私の言うこととか私の願いとか、全然聞いてない・・・よね。

男性陣の群れの中へ颯爽と駆けていく野々瀬局長の後姿を見ながら、私は「彼のこと、見送ってないから!絶対!」と自分に言い聞かせていた。

私の人生、これからどこまで転がってしまうんだろうか・・・。
不安と期待と、やっぱり不安と・・・あぁ、自分に手を合わせたい気分!

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