そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
彼は腕をゆるく私の前に回してきて、顎を肩の上に乗せている。
「亜湖」
「ん?」
俺のものだっていえる?と聞かれて頷けない自分がいる。
「あのこと、まだ怒ってるのか?」
とうとう、長井の方が聞いてきた。
私は、彼に背を向けているから、表情までは見えない。でも、私に触れている腕に力が入っている。かすかに彼が緊張してるのは分かった。こんな風に近い距離にいるなんて何年かぶりだもんね。
「あのことって?」
私は、わからないっていう振りをする。
「亜湖が、俺のところに来るって言ってくれたのに、それを断ったこと。あの時俺、すごく慌ててたし、亜湖のこと気にしてる余裕がなくて。ちゃんと亜湖が納得するまで説明すべきだった」
「うん、わかってるって」
長井が忙しかったのは、横で見ててわかってた。
でも、説明してくれなかったことを怒ってるわけでも、悲しんでるわけでもないよ。
「怒ってるのとは違うの」
「どう、違うの?」
彼は、戸惑ったような顔をする。
「長井、もう私、そのことなら怒ってないって」
怒ってないのは、本当だった。
私は、最初から長井にたいして、怒っているわけじゃない。
私は、彼の腕からすり抜けようとした。
彼に抱かれていると、息苦しくなる。
「待てよ、亜湖」
長い腕が、すり抜けようとするのを阻止するために、今度はしっかりと腕に力が入る。
「亜湖の気持ちが知りたい。どう思ってる俺のこと?」