そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~






「ああ…こんなんじゃ酔っぱらわないよ、紗和。酒が薄すぎ」

紗和が、テーブルに並んだ空のチューハイの缶を、片っ端から片づけていく。

「人ん家に来て文句垂れるな」


私は、全然よくならない気分を紛らせたくて紗和に話題を振る。

「どうだったのよ、紗和の方は?」


「ぜーんぜん、ダメ。失敗だった。亜湖は行かなくて正解だよ」

長井と駅で別れて数時間後、私は紗和のマンションまで押しかけていた。


紗和に飲みに行こうよと誘われていたけど、私は断わって長井と一緒に飲んだ。
あ~あ、最初から紗和といればよかった。


「そっか、なんで男なんか必要なのよ」
私は、紗和に愚痴を言う。


「あんた、3年前とは随分意見変えたのね」


「そうよ。お節介な奴なんかいらない。そんなんだったら孤独にひたすら受験勉強の方がまし」

「そうよ。最低なんだから、んで、その最低男に何て言われたの?」


「危なっかしくて見ていられない、心配だ。亜湖は何かやりだすと、がむしゃらになって心配だって」


「ひっどーい!!そうじゃん!!その通りじゃん、本当のこと言うなんて最低だね」


「見ていられないって。支えてやりたいって……」


「そんで?そんなに最低な奴、ぶっ飛ばしてやった?」


「もちろん。ぶっ飛ばしたわよ」


「どうやって」


「彼氏がいるって。付き合ってる人がちゃんといますって」


「はあ?ちょっと、亜湖、なんでそういうすぐばれるような嘘つくの」


「バレなかったわよ。わかったって言ってたから」

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