そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~


ずっと法務課にいて、社内でも付き合いの薄い私は、普段同じフロアで働いてる管理部であっても、他の部署の社員の名前と顔が一致しない。
この、太田さんという人も、失礼ながら名前も知らなかった。もちろん、私たちを冷やかした社員のことも。


その点、長井はいつも人に囲まれている、周りの人は、彼に近づいて、話しかけ、親しくなろうとタイミングをうかがってる。いつも、そうやって自然と人の輪の中心にいる。


「楽しそうですね、彼」
太田さんは、長井のこと遠巻きに見ながら言う。


「そうみたいですね」



「緑川さんこの後、さっき言ってたユニットの件、俺と打ち合わせしませんか?」
なんと気の早い人だ。


「ええっ?今から?」そういわれても。ダメ。久しぶりに飲んだお酒が、結構体に染みて、まともに考えることができない。


「はい。もうすぐ一次会もお開きになりますし。ダメですか?」


私は、首を振る。
「今日は、仕事の話はちょっと。頭に入りませんから、日を改めましょう」



「そんな。いいじゃないですか、緑川さんは、横で俺が話すのを、聞いていてくれればいいですから」



太田さんは、お酒が強そうだ。私より飲んでるけど、全然酔ってない風に見える。

確かに、もう一度予定を合わせるのも、時間がもったいないと言えば、そうだけど。

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