じれったい
エレベーターが常務室と秘書課のある階に止まった。

「じゃあ、また後で」

玉置常務は常務室へ入って行った。

「はい、また」

玉置常務の後ろ姿を見送ると、私は先ほどの出来事を振り返った。

手紙のこと、昨日の夜にお兄さんの話を切り出したこと、今朝のお兄さんとのやりとりのこと――玉置常務はお兄さんと関わりたくないようだ。

それどころか、彼は敬語を忘れるくらいにお兄さんのことをひどく嫌っていた。

でも、どうして?

お兄さんとの間に何があったと言うのだろうか?

そう思いながら秘書課に入ると、
「おはようございます」

いつものように武沢さんにあいさつをした。

「おはよう、矢萩さん」

武沢さんがあいさつを返したことを確認すると、私は手帳を手に持って秘書課を後にした。
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