じれったい
翌日。

私は秘書課へ行く前に、常務室に顔を出した。

「おはようございます、玉置常務」

「おはようございます、矢萩さん」

私は玉置常務のデスクの前へ行くと、映画のDVDを出した。

「とても感動しました。

映画で泣いたのは、この作品が初めてです。

好きなシーンをあげたら、本当にキリがなくて…」

玉置常務に感想を言って、好きなシーンを思い出したら、また私の目から涙がこぼれ落ちそうになった。

「そうですか、よかったですね」

そんな私に、玉置常務が言った。

「矢萩さんはとても感受性が強いお方なんですね」

そう言った玉置常務に、
「あっ、はい…」

私は返事をすることしかできなかった。

感受性が強いなんて、最後に言われたのはいつだったのだろうか?
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