恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
ふむ。こうすれば、こう鳴る、と。
あら、楽しい。
小さい子は弾けてる気分になるわね。

「わー、綾乃ちゃん、上手ー」

「えへ。ありがと」

「お兄ちゃんより、綾乃ちゃんのが上手だね」

あ。芽衣、その発言はまずいよ。
だってこの人……

「次会う時に、本物のヴァイオリン聴かせてあげるね」

圭太郎がひきつった笑顔で言った。

ほら。
音楽に関しては かなりプライド高いんだもの。

「何か弾いてほしい曲はある?」

「ほんと? じゃあ、ママ、スマホ貸して! あの曲かけて!」

姉はハイハイ、とスマホを操作し、芽衣に渡した。
芽衣はそれを私たちに見せる。

「これ弾いて!」

見ると、
アニメの動画。
何やらイケメンの王子様とひらひらの戦闘ドレス?を着た女の子がヴァイオリンの二重奏をしている。

ゆったりした美しい曲。

なんでも、女児向けの、女の子が変身して戦うアニメに出てくるとのこと。

圭太郎は自分のスマホでも検索して、同じ動画を見つけた。

「わかった。これ弾いてあげるね」

「やった! 約束ね!」


***


帰りの車の中、圭太郎は真剣な顔で動画を何回も再生していた。

「耳コピ、できそう?」

「僕を誰だと思ってるの」

「はいはい、失礼いたしました」

「耳コピは問題ない。この二重奏をどう一度に弾くか考えてる」

うそー。音の幅はあるし、リズムも違うのに?

……まあ、弾けちゃうんだろうな。

そして、私も聴いてみたい。

だって、ヴァイオリンを弾く王子様、かっこよかったんだもん。




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