恋色シンフォニー 〜第2楽章〜

「ねぇねぇお兄ちゃん、バイオリン弾けるんでしょ?」

話が一段落すると、芽衣が圭太郎のもとへやってきた。
おもちゃのバイオリンを持って。

「これ、弾いて?」

いやいや、それ、おもちゃだし。

「えっと、ごめん……ちょっと小さくて難しいかな。芽衣ちゃん弾いてみてくれる?」

「えー、弾けないのー?」

圭太郎の顔がかすかにひきつった。
ちょっとちょっと、子ども相手だよ?

「こうだよー」

芽衣が得意げに弾いてみせる。
白とピンクの、一応バイオリンチックな形。
プラスチックの弓で、駒のあたりをこすると、音が順番に出て、リズムよくこすると曲になるという仕組みらしい。

「はい。お兄ちゃん」

芽衣が圭太郎におもちゃを差し出す。

圭太郎は苦笑しながら受け取って、弾き始めた。
なかなかシュールな光景だなぁ……。

曲はアイネ・クライネ・ナハトムジーク。
結構難しいみたいだ。なまじ弾ける人だと勝手が違うんだろう。音もよくないし。圭太郎の耳、大丈夫だろうか。


「えー、お兄ちゃん、下手っぴー」

今度ははっきりと、圭太郎の顔がひきつった。

「芽衣っ、このお兄ちゃんはね……」

「綾乃ちゃん、弾いて?」

芽衣がおもちゃのバイオリンを圭太郎から取り返し、私へと渡した。
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