恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
かすかなブレスの音がして、
曲が始まった。



情熱と哀愁が薫る主題。

最初の1小節で、彼の世界に飲み込まれた。



何をもってヴァイオリンが上手いか、というのはいろいろあると思う。

まず、音程。自分で音程を作る楽器だから。
そして、リズム。音楽の基本。
それから、音色。重要なのは右手。弓使い。

まあ、こういったテクニック的な面は圭太郎レベルになると、当たり前にこなせるんだろう。

彼の演奏を聴いて、いつもすごいと思うのは、『世界をつくるチカラ』。

ヴァイオリンに限らず、ピアノでも歌でも、音楽家に共通することだと思うけど。

演奏が始まると、空気が変わるのだ。

周りの空気を自分の色に染めて、聴く者を曲の世界へと引きずり込む。

“音が鳴ってる”だけではない。
これが、“音楽”をしてるということなんだ、といつも感心する。

ひとりでこんな世界を作り出してしまうんだから、圭太郎はすごい。



この主題は低いポジションで奏でられるので、まだ技巧的な派手さはない。

ただ、短調のフレーズは、哀しげで、それでいて情熱的で、妖しげで、多面的な魅力を持っている。ブラームスやラフマニノフ、リストといった多くの作曲家が、編曲や変奏曲を書いているのもうなづける。

それにしても何て魅惑的。
心臓がキリキリし、背筋がぞくぞくする。

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