恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
ごはんの後。
コーヒーを淹れたところで、圭太郎に電話がかかってきて、話しながらリビングを出ていった。オケ関係者らしい。
設楽さんがダイニングテーブルで甘いカフェオレを飲みながら、彼の方向をものすごく優しい目で見つめてるものだから、何だかじんときた。
同じテーブルで砂糖なしカフェオレを飲みながら、言ってみた。
「圭太郎、設楽さんがいなかったら、今の自分はないって言ってました」
設楽さんは優しい表情のまま、笑った。
「それはオレも同じだな」
「そうなんですか?」
「オレね、器用なの。小さい頃から、技術的には割とサラッと弾けちゃってたの。母親はそんなオレが危ないと思ったんだろうな。圭太郎を教えさせることで、感覚に頼らない技術とか、理論とか勉強させたんだよ」
「人を教えるのって、自分の勉強にもなるっていいますもんね」
「まさにそれ。しかもあいつ、なかなかに不器用ときた」
「へぇ、意外です」
「ただ、まあ、根性だけはあったな。正しい練習をすれば弾けないものはないっていうオレの持論を見事に体現してくれた」
……さらっとすごいことを言う。
正しい練習を教えた設楽さん。
弾けるようになった圭太郎。
「オレがソリストじゃなく今の職業を選んだのは、間違いなくあいつの影響」
うわぁ。
すごい。
「っていうのは、あいつには秘密ね?」