誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―
新撰組は主に刀を使い、槍を得意とする原田などをも擁するが、火器まで用いた大規模な戦闘に慣れているとは言い難い。
その点、質実剛健で鳴らす会津軍は軍制改革に成功しており、
軍事取調役兼大砲頭取【たいほうとうどり】の山本覚馬【やまもと・かくま】率いる砲撃部隊が全軍を引っ張って、よく戦った。
あの軍略がほしい、と土方が唸ったのを、斎藤はすぐ近くで聞いた。
長州藩における倒幕の急進派は、池田屋の騒乱によって主力を失い、窮地に追い込まれていた。
会津軍と桑名軍を相手取っての市中戦は死にもの狂いだったと言ってよい。
苛烈にして執拗【しつよう】な攻撃は、会津軍や桑名軍、同じく御所守備に当たる筑前軍を苦しめた。
形勢が覆【くつがえ】ったのは、薩摩軍が駆け付け、長州軍への一斉攻撃を仕掛けたためである。