クールな准教授の焦れ恋講義
一途な恋
 思ったより少ないな。クリックしてそれぞれのメールに添付されたファイルを開く。締め切りの午後五時を過ぎたところだから、とりあえずここまでは確定だ。

 印刷ボタンを押したところで部屋のドアが音を立てて開いた。

「早川ー。俺の女子高化計画どうなってる?」

「残念ながら共学も厳しいかもしれません」

「なっ」

「昔では考えられませんけど、妥当なところじゃないですか?」

 仰々しく肩を落としてからこちらに歩み寄ってくるので私はキャスター付きの椅子を引いて場所を空けた。元々このパソコンもこの椅子も彼のものだけれど。

 お互いの肩と肩とが触れる距離まで近づき、彼は眼鏡越しにその瞳をパソコン画面に向ける。そんな何気ない行動一つに私は気が気ではない。こっそりと横顔を盗み見しながら激しくなる心臓の音を落ち着かせようと必死だった。

「見事に野郎ばっかりだな」

 少し距離が離れて私は我に返り、印刷機から吐き出されている用紙をまとめた。

「これ志望理由書。印刷したので確認しておいてください」

「ん」

「そんなに男子ばかりは嫌ですか?」

「そうじゃないけど、体育会系のノリが苦手なんだよ」

「女子ばかりだと、それはそれで面倒だと思っているくせに」

「まぁな。でも一回くらいはそれもいいかと思って」

 話しながらも彼の目は印刷した用紙に釘付けだった。すらっと背が高い彼にはよく似合っているけれど、サックスカラーのボタンダウンシャツにデニムのジーンズという格好はどう見ても三十代半ばには見えない。そしてなにより
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