あなたの願いを叶えましょう
「だって拒絶されるのが怖いじゃないですか。それに好きな人を困らせたくない」

私はお猪口の日本酒をグイッと飲んでからにする。

うーん、と唸って、野口さんはお猪口にお酒を注いでくれた。

「まぁね、歳を重ねるごとに臆病になるってのはあるよね。立ち直るのも時間がかかる。なかなか、この人だ!って思える人には出会えなくなるからね」

「そぉですよ」

突然訪れた恋はあまりにも久しぶりすぎて、ときめきよりも、戸惑いの方が遥かに多い。

「でもさ、相手を困らせたくない、ってのは冨樫が昔よりも、相手の事を思いやる事が出来るようになったって事でしょ」

「野口さん…」

野口さんが柄にもない事を言ったもんだから、しんみりしてしまった。
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