あなたの願いを叶えましょう
悪目立ちするから嫌だと言ったのに『時間が勿体無い』という黒澤氏の身勝手な理由から人目につく社員食堂で2人ランチを食べる羽目になった。

さっきから脇を通る人の視線が痛い。特に女子の。

「で、どうだったんだよ。この間の合コンは?収穫あったのか?」

この間、食事をした時に酔っ払った勢いでうっかり口を滑らせて、余計な事を話してしまったようだ。

黒澤波留に情報を自らリークしてしまったことを後悔するが時すでに遅し。

「個人情報なのでお答え致しかねます」

張り付いたような笑みを浮かべ質問をシャットアウトする。

黒澤氏をチッチッチッ、と舌打ちしながら人差し指を横に振る。

「誰もお前の個人情報なんて興味ない」

失礼な事を言われて私は鼻の頭に皺を寄せる。

「そこで出会いがあれば、俺はお前の願いを叶える必要がなくなるだろ。そういう理由で聞いているまでだ」

ああ、そういう事か。

過剰反応した恥ずかしさを誤魔化すように私はテヘっと笑って、何の魚かよく分からないフライを齧る。

「この間の合コンは幼馴染の友達が開いてくれたの。そうそうその友達ってさNALのグランドホステスですっごくモテるんだー。それでね、場所は有楽町の…」

「おい!」

黒澤波留は付け合わせのサラダにブスリと箸を突き立てて、私の話しをぶった斬る。
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