聖獣王と千年の恋を


 あまりにしげしげと眺めていたからか、チェンヂュが気付いて説明してくれた。

「あれが気になるのか? 俺が作ったんだ」
「え? チェンヂュさんは剣の鍛冶屋さんじゃなかったんですか?」
「主に作ってるのは剣や包丁だけど、時々鋳物や彫刻も作るんだ」
「へぇ。多才なんですね」
「いやぁ、彫刻の方は気分転換だから売り物になるような物は作れないんだけどな」

 そう言って照れくさそうに笑いながらチェンヂュは席を立つ。そしてシェンウーの載った戸棚の引き出しから探り出した物をメイファンの前に差し出した。

「ほら。これをやるよ」
「え、いいんですか?」

 手のひらの上に載せられたのは、小さくて丸っこいシェンウーをかたどった銀色の置物だった。戸棚の上にある精巧な彫刻とは違い、体と頭が同じくらいの大きさで足もちょこんと短い。体に巻き付いた蛇共々大きな目がくりっとして愛らしく誇張されている。
 メイファンは思わず目を細めた。

「かわいい。ありがとうございます」

 手のひらに載った銀色のシェンウーを眺めてニマニマしているところへ、リンユーがお茶と切った桃を載せた皿を持って戻ってきた。桃を真ん中に置いて皆にお茶を配り、メイファンとチェンヂュの間に座る。
 そしてメイファンの持ったシェンウーを指さした。

「それ、あたしも持ってる。ほら」

 そう言って首から下げた袋の中から、銀のシェンウーを取り出して横に並べる。リンユーは意地悪な笑みを浮かべてチェンヂュを横目で見ながらメイファンに暴露した。


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