お嬢様 × 御曹司
私は、お皿を置いた形のまま固まる。


不意に、ある考えが頭をよぎったから。


さっきの執事さんはパーティーの係りだから、巡回しているだけ。


だから今、私とたけくんは執事もメイドも付いていない。


はっきり言うと私たちは御令嬢とかおぼっちゃまとか言われる類のものだけど、無防備だ。


そして、それこそ私が求めた自由の身、なのかも?


だから今頭をよぎったアイディアは、私の疲れ切った頭からしたら出てきて当然だよね。


私はお皿を置く体制から元の体制へと戻ってたけくんに向き直った。


「ねぇ、たけくん。おかしなこと言ってもいい?」


「なに?」


私は、悪気のない笑顔で、周りに聞こえないようにつぶやいた。


「このパーティー会場から、脱走しない?」





今日の数時間しか話してないのにずいぶん打ち解けたたけくんに、なぜその話をしようと思ったのか、その時の私にしか理解できない。


でも、どうしてだかたけくんはその話に乗ってくれるような気がしていたのは覚えてる。


それが、この後の大きな事件につながるとも知らないで。
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