お嬢様 × 御曹司
「そうね。ありがとう。でも、」


お椀に味噌汁をよそい終わった母上は、俺の目を見て、


「あなたはあなたでいいのよ。」


と言った。


その言葉が時々俺の心に問いかける。


俺は何がしたいのか、このまま父上がひいたレールの上を、ただ進むだけでいいのか。


昔、武士(ぶし)は主従関係をとても大切にしていた。


主人を守るためなら命さえ捨てる。


ただ、納得のいかない命令が下されたときは、自分が決めたことを貫き通す。


その考えこそ男らしいと俺は思い、武士道のままいきたいと願っている。


「…うん。」


子供のように、返事をしておく。


俺が俺のままでいいという母上の言ったことはまだ理解できないけれど。


俺、大道寺 武士 (ダイドウジ タケシ)は、大道寺財閥の御曹司。
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