【詩集】愛が死んだ世界
【窓の外の自由】
その窓は開かなかった

青い空をガラス越しに
見ることはできても
それを自分の目で
直接見ることはできない
子供らしく月に手を伸ばそうとしても
透明な壁に指をはじかれた

私は世界にいらない子だから
あの窓は開かないのだと思う
暗くて、なにもない世界の隅で
かろうじて存在が許される

『お前なんか産まなければよかった』
もうこの部屋には来なくなった
両親はそう言っていた
私をこの世に存在させたものが、
存在を否定したのだから私は
もう消えていく以外に道はないのだろう
毎日運ばれていた食事も、だいぶ前に
止められてしまった
もう食事を運ぶ必要がないとでも
主張しているかのように
私なんかいないというように

私が消えてしまったら
だれか悲しんでくれるだろうかとか
考えるほど無知で幼くはないけれど
せめてあの窓が開け放たれて、楽しそうに
空を飛んでいる鳥になれたらなぁなんて
無謀にも考えてしまうあたり、
所詮私も子供なのだろう


鳥になれますようにと願いを込めて
最後の力を振り絞って窓に触れる












その窓は、開かなかった
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