「君へ」 ~一冊から始まる物語~
そんな事を話していた時、もの凄い大きな音をたてて、病室のドアが開いた。
そこには目が赤く腫れ上がっている母と普段から強面なのにその何倍も強面になっている父がいた。
そしてその後から、看護師さん、お医者さん、そして警察官が入ってきた。
すると母が私の目の前に立った次の瞬間、頬に鋭い刺激がきた。
母におもいっきり殴られたとわかったのは少し遅れてからだった。
生まれて初めての拳。これは私にとってはとても嬉しいものだった。
2人は私に興味がなさ過ぎて、手をあげるどころか、声をかけられること自体、数えられるぐらいしかなかった。
私はちゃんと愛されていたんだ。
そう思った瞬間、私の想いを全てを崩し消すかのような言葉が母の口から飛び出した。
「お前が死ねばよかったのに。」
私は酷く傷ついた顔になっていたんだと思う。
それを母達に見せないように、都兄が私の前に立っていてくれた。
隣の唯都を見ると、今にも爆発しそうな怒りを一生懸命ガマンしているのが、わかった。
私は唯都の手をそっと握って、都兄の服を掴んだ。
『私は大丈夫。もう慣れてる。』
そう言ってるつもりで。
唯都と都兄は私を見てから、顔を合わせて、ひとまず落ち着いた。