ばかって言う君が好き。
笑いながら「大好きだよ。」そう言って、何度も私に口づけしてくれた直人。
おどけた感じも、意地悪なあの表情も―――いつものやさしさはここにはない。
何かを訴えるような、
強い、激しいそれに私は抵抗ができない。
「直人…や…。」
ずるりと服が下がって、露になってしまっている私の左肩に、彼は何も言わず、口づけを落として。
気づけば私は、涙を流していた。
「…っ。」
彼は腕を離して、私を起こす。
「直人……。」
「疑ってるんじゃなくて。頭では分かってんだけど、でも…なんで、二人っきりなんだよ。
なんで、リンリンって親しげなんだよ。
なんで――――…触れさせてんだよ。」
「あ…。」
苦痛に顔をゆがめた彼。
悲しそうな、切なそうな、今まで見たことがないくらい傷ついた彼がそこにいた。
「直人、なおと…」
私は腕をのばして、抱きしめようとするのだけれど、
「ごめん、先寝る…。」
腕をかわして、バタンと静かに彼は寝室の扉をしめた。
隣で横になる彼の背中を見ながら、私はやっと気づいたのかもしれない。
彼はずっと我慢していたのだと。
ご飯を一緒に食べて先輩の話をしたときも、デパートで先輩に会ったときも、
のとき感じた違和感はきっと間違いじゃなくて―――
直人のお母さんに教えてもらっていたのに、
寂しがり屋で、我慢しいで、
ずっとずっと一人で耐えていた彼の事を……。
「直人、ごめんね、ごめん。」
彼の後ろ背を抱きしめながら、私はその日ベッドにたくさんの染みを作った。