ばかって言う君が好き。
「どうぞ。」
リビングのドアを開けてくれた彼に「座って」とすすめられた私は、黒のローテーブルの左前に座った。
私の家で彼といるときに座る、位置関係と一緒。
「お茶でいい?」
「うん。ありがとう。」
振り返れば彼の顔が見える、対面キッチン。
用意してくれている彼の顔を見て、優しいなぁと思ってしまう。
私の視線に気が付いたのか、見るなとばかりに彼がべーと舌を出す。
私もむっとしてべーと舌を出す。
「ぶさいく。」
「ひどい!」
いつものやり取りに緊張が少しほぐれる。
「あ、映画見ない?」
用意してくれたお茶をテーブルに置きながら、彼はテレビ台から1本のDVDを取り出した。
「なんて奴?」
「ロボットが変身するやつ。」
「あ!好き!見よう!!」
「好きだと思った。」
彼がデッキにディスクを入れる。
でかでかとタイトルの登場。
一瞬、真っ暗な画面がうつり、彼と私の姿がテレビに映される。
ローテーブルの前、同じ辺に座っているのに、隅と隅の感じ。
もうちょっと近くいってもいいかな、
なんて思ってしまう。
彼をちらっと見る。
「ん?」
気づいた彼が私を見返す。
「何?よっかかる?」
本日何回目?と聞きたくなるような彼のおどけた口調。
「もーうるさいなあ。」
「はいはい…」
そういうと思ってましたとばかりの口ぶり。
「ってえ?」
彼が珍しくひょんな声をだす。
「もう、映画が聞こえない!
しー!」
また一瞬画面が真っ暗になる。
私と彼が画面に映し出される。
彼の肩に頭をあずけた私。
彼をちらっとのぞく。
頭を抱えた彼。
「……一本とられました。」