君に触れたい……。
なのに、今の雪はまるで、


「……思い出したくない、記憶だったのか……?」


グスッ、と鼻をすする音が自棄に耳に届く。


雪は弱々しく頷き、言った。


「私の、事故のことを思い出したの……。家の近くの川で、溺れて……」


それ以上は、言葉にならなかった。


堪えていた嗚咽を漏らし、頬を大粒の涙が伝う。
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