こんにちは、頭蓋さん。



大丈夫だ心配ないと、どれだけ諭してもきかない頭蓋さんに折れ、結局彼と電車にのることになった。


今は改札を抜け、ホームで電車を待っているところだ。


幸いバーに麻野さんがいなかったので、二人で居ることをからかわれたりはしなかったけど。とにかく居心地が悪いというか、隣が気になる。



「頭蓋さん」

「んー?」

「いつもこんなに視線集めてるんですか、あなた」



そう、駅までの道のりで彼を見て振り返る人の数がとんでもないのである。


夏の暑さにも負けない熱い視線が私の隣に集中する。


まあ無理もない、女の私が嫉妬する風貌を持つ男だ。この顔を見ていると理不尽な怒りが湧いてくるし。


でも当の本人は隣で微笑するだけだった。



「その顔、営業向きですよね」

「困ったもんだよ。職場で受付になりませんかとか勧誘あるんだから」



俺人見知りなのにな、と。


嘘つけ。いまさらか弱いアピールをしても無駄だ。初めて会った時普通に接していたくせに。



それから何度か彼とやりとりをしているうちに、いつも乗っている電車が駅に到着した。


二人で満員の中スペースを探す。すると近くでちょうど一人立ち上がって出口に行ったのでそこに向かった。


私が座るように頭蓋さんが目で合図してくる。ぎっと睨み返したけどさらに強く見つめられたので仕方なくシートに腰を下ろした。

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