【B】きみのとなり

5.結婚式 前編 -氷夢華-


6月12日。
結婚式の日は早朝から慌ただしかった。


兄貴は前夜にもかかわらず、患者さん急変の呼び出しの後、
夜中に飛び出していくとそのまま戻ってこなかった。


朝早くに一人で起きたアタシは迎えに来てくれた弥英の車に乗り込んで、
二人の職場でもあるサロンへと移動する。


サロンに飾られた真っ白なウェディングドレス。


ウェディングエステプランで施術してもらったアタシは、
不規則な生活リズムにもかかわらず、肌状態が絶好調だった。


真っ白なドレスを二人がかりで着せてもらった後、
タオルをかけられて、順番にメイクが肌に乗せられていく。


それと同時に髪型も整えられて行く。



支度している途中に、オカンとオトンが私服のまま姿を見せる。




「氷夢華……綺麗よ」



そうやってアタシに声をかけるオカンの傍で、
オトンはカシャカシャとカメラのシャッターを切り続けた。



アタシの支度が終わった後、オトンもモーニングを着付け髪型を整えて貰い、
オカンも黒留袖を着つけて貰ってた。


準備が終わったアタシたちは迎えに来てくれた車に、
ゆっくりと乗り込んで鷹宮へと向かった。




真っ白なウェディングドレスを身を包んだアタシは、
公園側の飴色のドアを開けて、鷹宮の教会内にある控室へと入った。


すでにアタシの親族や、兄貴の病院の関係者で賑わってた。




控室の椅子で待っているアタシの前に、
タキシード姿の兄貴と、モーニングに身を包んだ鷹宮院長とオトンが姿をみせる。

その後ろには、黒留袖に身を包んだオカンとおばちゃん。
そして水谷総師長とリズ夫人の姿が確認できた。



「氷夢華……綺麗だ……」


そういって立ち尽くした兄貴にアタシは「元がいいんだから」って生意気にも言い返すと、
笑が周囲に広がった。



『お時間になりました。
 皆さま、式のお支度をお願いします』


スタッフの声で、それぞれの場所へと誘われていく。


アタシはドレスを持ち上げて移動すると、
オトンと一緒にバージンロードを兄貴の方に向かって、
一歩ずつ、ゆっくりと踏み出した。


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