【B】きみのとなり
広がる沈黙の時間、重い空気。
こんな時間にしたいはずじゃなかったのに、
次第にアルコールを口に運ぶペースも食事を口に運ぶペースも落ちてくるわけで……。
あぁ……また胃が痛くなってきた。
無意識に手が鳩尾の方に伸びていく。
「おいっ。氷夢華どうかしたか?」
「別に……なんか外で食べてきたのが響いてるみたいで食べれないや。
ごめん、兄貴。
はいっ、アタシの肉も食べていいよー」
兄貴のお皿に更にお肉を放り投げる。
引き出しから薬を取り出して一気に流し込む。
そんなアタシを兄貴は不安そうに見つめながら食事してた。
食事の後、洗物しようとしたのに兄貴に阻止されてアタシはTVタイム。
ソファーに寝転んで買ってきたぱかりのファッション雑誌を開く。
アタシの代わりに洗物をしてくれた兄貴が、
リビングへ戻ってきてきてソファーの近くに座り込んだ。
「氷夢華、ありがとな。
美味かった」
「別に……あんなの肉焼いただけだし」
可愛い返事の一つくらい出来たらいいのに、
アタシはそんなことすら出来ない。
だから兄貴は……女としてアタシを見てくれないの?
言葉にしたくても出来ない自分の想い。
もどかしいよ。
こんなに近くにいる。
一緒に暮らしてる。
だけど兄貴は私を女として受け入れてくれない。
何で……泣きたくないのに涙、出てくんじゃん。
涙を見られたくなくてソファーから飛び起きると
早々にリビングを出て自室に戻ろうと立ち上がる。
その時、逃げようとするアタシの手を兄貴はグイっと掴んで
自分の方へと引き寄せた。
暖かいものが降り注ぐ。
兄貴はびっくりしたように慌てて唇を離した。
……嘘……。
兄貴が……兄貴からキスしてくれた。
放心状態になりながらもその兄貴の温もりの余韻の感触を抱きしめる。
「……悪い……」
えっ?
何で……何で謝るの?
アタシ、嬉しいんだよ。
兄貴が……こうやってアタシに触れてくれて。
もっと触れてよ。
兄貴の逞しい腕の中、すっぽりとおさまったまま
私は兄貴に誘導されるままに座り込む。
兄貴の腕がアタシの胸の前でクロスするように
ガッシリとアタシを捕まえていて、
それだけでアタシの芯は疼いていく。
「なぁ……氷夢華」
兄貴の息が耳元をくすぐる。
それだけで体の力が抜けていくようで。
「何?」
兄貴の腕の中で、この疼きを知られたくなくて
冷たくあたりさわりのない返事を一言。
「出掛けるかっ明日。
明日、逃したら次、何時機会がつくれっかわかんねぇからなー」
えっ?
兄貴……何処に出掛けるの?
「兄貴?」
「なんて顔してんだよ。
一緒に暮らしてんだ。
氷夢華んとこの親父さんとお袋さんに会うの久しぶりだな」
「えっ?」
アタシのオトンとオカンに会う?