【完】さらば憧れのブルー
三人がいなくなった後、雄太郎さんが「ちょっと長くなるから、座って話さない?」と言って腰を下ろした。
そのまま立っているわけにもいかなくなり、私も遠慮がちに隣に座った。
肩が触れるほど近くに座ったからか……青い光が近くなったこともあって隣に座る雄太郎さんの顔の表情がぼんやりと見えたこともあってか……緊張なのかそれとも別の気持ちからなのか胸が高鳴った。
「昔……って言っても去年の今頃だけど……あそこに見える海から飛び出した岩の上に乗って、二人でこの青い海を何回も見に来たんだよ」
「え?」
「本当に飽きるくらい毎日、毎日見に来てたんだ」
「私と雄太郎さんが?」
「そう……」
「……」
思い出そうと、必死に雄太郎さんが言った言葉の中のキーワードを繰り返し繰り返し頭の中でよみがえらせてみたけれど、一向に心当たりはなく……変わりに思い出そうとするときに襲ってくる頭の痛みが刻む波の音よりもゆっくりとした間隔で鈍く伝わってきた。
頭を押さえる私を見て雄太郎さんが「大丈夫?」と声をかけてきた。
「俺が渡した薬……持って来てる?」
雄太郎さんの言葉にはっとした私は、ショルダーバックの中から手探りでそれを取り出した。
「持って来てくれたんだ……」
「うん……信じたかったから、雄太郎さんのこと……」
雄太郎さんは、その言葉を聞いて「ありがとう」と小さく呟くと、私の手からそっと薬を取った。