【完】さらば憧れのブルー
そして薬を銀色のパッケージから親指で押し出して取りだすと、私に手渡した。
「待ってて。俺、水持って来てるから」
そう言って雄太郎さんは、自分の背負っていたリュックから水のペットボトルを取り出すと、キャップをはずして私に手渡した。
私は、何のためらいもなくそれを受け取って水を口の中に含んで、薬をこくりと飲み込んだ。
雄太郎さんに終えっとボトルを返すと、雄太郎さんはそれにキャップをはめながら静かに話し出した。
「……俺と優花が出会ったのは、去年の4月。俺が上の展望スポットのところで海を眺めてたら、優花が自転車ですごい勢いでそこに来て、自転車を急ブレーキで止めたかと思ったら、今きたところの階段をチェーンを越えて降り初めてさ。その時俺が声かけたのがきっかけだった。俺、そこ降りちゃいけないところだと思って、優花を止めたんだよね。……まあ、止めたのはそれだけじゃなかったんだけど」
「それだけじゃなかったって?」
「優花、その時泣いてたから」
「私が?」
「そう。優花は俺が止めようとした手を払ってそのまま階段を降りて行った。俺もその後を追いかけて、今みたいにこうして、泣いてる優花の隣で一緒に座ってた」
「座ってただけ?」
「うん。だって、優花俺のことすごい睨み付けてきたし、話しかけるの怖かったからね」
雄太郎さんは、その時のことを思い出しておかしくなったのか、くすくすと笑いながら私の顔を見た。
私は、なんだか恥ずかしくなって、膝に顔を隠すようにして小さく縮こまった。