【完】さらば憧れのブルー
私と一紀は合格者発表がされている大学の中央広場から少し離れたベンチに腰を下ろして、菜子に電話をかけた。
菜子は県外の専門学校に進むことになり、今日は両親とアパートを探すために出かけていた。
「こんな日に一緒にいられないなんて」と、前の日にわざわざ神社まで行って、私と一紀のために合格祈願のお守りを買ってくれたのだ。
菜子に私と一紀が合格したことを伝えると、電話の向こうで菜子が泣いているのが分かるくらい、声が途切れ途切れになっていた。
電話を切って、ふうと息を吐いて、隣に座っていた一紀の顔を見た。
「すっごいすっきりした顔してる」
「優花こそ。すっごい気の抜けた顔してる」
「気の抜けたって……」
困ったように笑う私を優しく見つめた一紀は、私の言葉を待つようにずっと見つめ続けた。
見つめ続けられて恥ずかしくなった私は、そんな一紀の視線から逃げるようにしてふいっと視線をずらした。
「あの、一紀……」
「うん」
「え……っと……」
「何?」
一紀は、私が何を言うのか分かっているようで、笑いを堪えているようだった。
そんな一紀を横目で睨みつけながら、「にやにやして気持ち悪いなあ」と強がるのが精いっぱいだった。
「……まだ私の事、好き?」
私の言葉に待ってましたかとでもいうように、一紀が上半身をぐっと倒して、私を見上げるような形で私の前に顔を横から突き出した。