はじまりはミステイク



グイッと右手を引っ張られ、見知らぬおじさんとの距離は開いた。


「わっ、藤山」


「おまたせ」


返事をしたのは藤山だった。そんな私達の様子を見たおじさんは、そろーりと逃げて行った。


「ねぇ、こういう場面って、チャラ男に声かけられるんじゃないの?」


「藤山のお兄ちゃんみたいな?」


そうそう、と笑いながら返す藤山。


「でも、あのおじさんが持ってた紙、子供達のボランティア活動的なやつだったよ」


「あ、そうなの?てっきり夜のお仕事かと」


「私もそれだと思ったよ」


2人で顔を見合わせて笑い合う。


「でも、助けてくれてありがとう」


「そりゃ、彼氏ですから」


サラリとそう言った私服の藤山。7分丈の白のUネックTシャツに紺のジーパン。シンプルなブレスレットしててラフで……カッコイイかも。


でも、Tシャツの左胸元にクマさんいるんですけど!



< 22 / 246 >

この作品をシェア

pagetop