はじまりはミステイク
「ふふっ、そう?じゃ、夏休み楽しんでね」
そう言い残して、背を向けて歩き出した藤山。
くー、なんなの、その後ろ髪を引くような言葉。
「……っ、時間あったら、藤山の相手してあげるからっ」
可愛くない言葉を藤山の背中へ投げる。
藤山振り返らず、右手でオッケーのサインを返しながら歩いて行った。
悔しい。
いつもどこか上手の藤山。
どっちが年上か分からなくなる。いや、私が先輩なんだけどさ。
「嘘……」
「嘘はつかない」
目の前に出されている紙の文字を読む。
【夏休みの2週間補習組、天木茉利】
「先生、これ何かの間違いじゃないですか?私、勉強したんです」
「俺の方が間違いじゃないか?って思いたい点数だらけだったぞ。ほれ、見てみろ」
個人のテスト結果一覧を見る。
「なにこれ、赤点!?」
数学29点、英語32点……あぁ、他の科目ももう見たくない。
職員室に呼ばれたと思ったら……このお話だったのか。
「このまま夏休みエンジョイしろよー!なんて野放しには出来ないからな」
「うっ……」