クリア・スカイ

 駆は再び、若女将に向かって頭を下げた。何度もお礼をしているところを見るに、よほどこっぴどく絞られたのだろう。それにしても、回収できなかったってどういう意味なのだろう。

 小さな疑問を抱きながら、柳さんの部屋に向かう。やっぱりこの時間の旅館はまったりとしていて、仲居さん達とすれ違うこともなかった。


「柳さん、おはようございます。空野と宮村です」

「どうぞ、中にお入りください」

 二日連続でおしかけて迷惑じゃかったかな、と少し心配していたけど、柳さんの声は相変わらず優しくてほっとした。

 そして、例外なく今日も白いシャツと着ている。


「どうぞ、座ってくださいね」

 私と駆は、昨日と同じ場所に座った。柳さんの隣には、何かがぎっしりと詰まった旅行鞄が置かれている。

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