クリア・スカイ
……話しかけてしまった後に、いろんな言い訳を頭に浮かばせる。一体これは誰への言い訳なのだろう。
柳様は私の声に反応してすぐに振り向いた。目を丸くして、話しかけられたことに驚いているようだ。でもすぐにその表情は笑顔に上塗りされた。昨日と違うのは、彼はメガネをかけているということだ。
「こんにちは。えっと……この島の方ですか?」
「あっ、はい。いま高校の帰りで……。柳様は、どうしてここに?」
「えっ? 僕の名前を知っているのですか?」
笑顔は再び驚いた顔へと上塗りされた。その顔を見て、ようやく私は気づいた。
この人、私のこと旅館の仲居だって気づいていない。気づいていないっていうか、覚えていない……。まぁ、それが普通なのだと思う。そう分かっていても、ショックはショックだ。