クリア・スカイ
五.止まった時間。
 
 私と柳さんは、土曜日の約束をした後も少しだけ会話を続けていた。柳さんは一週間くらいこの島に滞在予定ということ、大学では文学部に所属しているということなどを知った。

 そして私は、平日は一日おきに旅館でアルバイトをしているという話をした。


「ということは、今日は旅館には行かない日なのですね」

「はい。旅館に行かない日は病院へ、友達のお見舞いに行っているんです。今日もこれから行く予定で」

「そうですか。では夕方になる前に行った方がいいですね。長々と引き留めてしまってすみませんでした」


 なぜか柳さんは私に謝った。私から話しかけたのがきっかけで、彼が謝ることなんて何一つないのに。でも嫌な気分ではない。こういう気の遣い方が大人と子供の違いなのかもしれない。


 
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