恋愛結婚させてください!
仕事を終えて、ロッカーで着替える。
今日の日勤は散々だった。
当直明けの部長とトウマ君はすぐに一緒にいなくなったけど、
「コムギ、しっかり仕事しろよ。」とポンと頭に手を乗せてから、
ナースステーションを出て行ったので、
ナースの皆さんの視線を一気に集めた。
やれやれ。
休み時間は皆さんに囲まれたけど、
私がトウマ君の事も、許婚っていう話も何にも知らなかったので、
親が決めた許婚らしいって事が信じてもらえたみたいだ。
「でも、カッコいいですよ。芦沢先生。」
と後輩の美也(みや)ちゃんが私の顔を覗いて言ったけど、
「うーん。あの表情も変えないクールな感じはちょっと、話しかけにくいかなあ。」
と5年目ナースの恭子先輩はクスクス笑う。
「ソオいう問題じゃなくって!」と私は頭を抱える。

頭の中がごちゃごちゃだ。
上手く判断できなくて、何度今井主任を鬼に変えたかわからない。
平日じゃなくてよかった。
平日にこんなにボンヤリしてたら、
リーダーを止めさせられるところだ。
こんな事で、今までやっとの思いで積み上げた信用をなくすわけにはいかない。

「今日だけ大目に見てあげる。」
と仕事が終わったタイミングで主任が笑顔で言ってくれてホッとする。
「本当にご迷惑をおかけしました。」とふかぶかと頭を下げると、
「許婚ねえ。まあ、お互いちゃんと仕事をすれば問題ないでしょ。
職場恋愛っていくらでもある話だし。」と笑うので、
「そんな事ではありません!」と大きな声が出てしまう。
主任がクスクス笑って、
「明日はやすみでしょ。
気持ちを切り替えて月曜から出てきて。お疲れ様。」と歩き去って行った。
「よろしくお願いします。お疲れ様でした。」と後ろ姿にまた、深く頭を下げた。
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